ブックタイトルフリーマガジンあばや vol.21
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フリーマガジンあばや vol.21
07 TANEGASHIMA FREE MAGAZINE「AVAYA!」高校生フリーペーパープロジェクト鹿児島県立種子島中央高校 普通科三年 新 開 彩 音髙 磯 楓 雅内に設置されている孵化場に再び埋める。埋める時には卵の向きに気をつけ、毎日砂の温度を測り、孵化をしやすい環境を作っている。孵化後のウミガメの赤ちゃんは、たらいのなかで保管されており、私たちも実際にえさをあげてみた。小さなえさを食べるために口をパクパクさせるがなかなかうまく食べることができない様子や、手と足をばたばたさせて泳いでいるウミガメの赤ちゃんを見ていると、じわじわと愛着心が湧いた。放流する際には、出会って間もないウミガメの赤ちゃんが、海に向かって前へ前へと進もうとする姿に、名残惜しい気さえした。 実際にウミガメ放流までの経験をした子供たちと話してみると、「ウミガメの卵を触って命の重みを感じた。」「大きくなって帰ってきてほしい。」と笑顔で話してくれた。ウミガメの赤ちゃんの命と自分の命を重ね合わせ、多種多様な生命とのつながりを実感しているように、子供たちには情操的感情が備わっていた。また、「僕たちが放流したウミガメの赤ちゃんは大きくなってまた帰ってくるの?」と疑問を持った子供もいた。このように実際に自然と直接触れ合うことで、子供たちの想像力を働かせ、新たな課題を自ら発見し、子供たちの学びへと発展している。 次に、「ウミガメ留学」についてだ。ウミガメ留学は、全国各地から留学生を受け入れている。地元の子供たちは、幼い頃より都市部から来た留学生と共に生活する機会が多く、多様な考え方を受け入れる心が培われてきている。そして、それぞれの土地で学んだ情報を共有し合うことで、お互いに自分たちが住んでいる地域が有する価値を、再発見出来ているようだった。このように地元の子たちにも留学生にも未経験の知識を蓄えられるという点がウミガメ留学の効果だ。 以上のことから、子供たちにとってウミガメ放流やウミガメ留学は、たくさんの学びを獲得する機会であり、それらの経験が「生きる力」を育む基礎を形成している。また、地元の子供たちが、種子島を自然の宝庫であると実感できる経験の一つでもあり、自然を愛することだけでなく、故郷を愛する機会を作ることにも繋がっていると感じた。三.おわりに 私たちの活動に協力してくださった岩岡小学校の先生方は、常に子供たちのことを考え、今ある課題と積極的に向き合っていた。現在新型コロナウイルスが猛威を振るい、様々な行事や活動が中止となる異例の事態となった今、教育現場では、これまで見られた問題点とは別に、新しい教育課題も発生するだろう。『かわいい子には旅をさせよ』という諺がある。この言葉の意味は、「自分の子供が大切でかわいいのであれば、自分の手元に置いて甘やかすのではなく、社会の辛さや厳しさを経験させたほうがよい」という意味だ。このように、経験は何事にも替え難いという先人の教えは今なお変わらない。得てして、引き算で物事を捉えがちな昨今の社会状況の中においても、子供たちに与えられる経験は何なのか。環境や時代によって異なるかもしれないが、このことについて、私たちはもっと前向きに模索していく必要がある。 今回の活動をきっかけに、子供たちの学びを知り、地元種子島の教育環境に直に触れる体験をすることができた。これも私たちの貴重な経験の一つだ。この経験は教員を目指す私たちにとって、かけがえのない時間であった。いつか子供たちに無限に存在する「生きる力」を引き出せるような教員となるため、より広い視点で物事を捉えられるよう、様々な場面に飛び込み、多くの経験を積みたい。そして、種子島の自然が育ててくれた私たち自身がもつ「生きる力」を多くの子供たちに伝えられるような教員になりたい。