北薩・県央の素敵情報満載 Miyan(みやん) ルックル

北薩・県央の素敵情報満載 Miyan(みやん) ルックル page 40/48

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桑幡正清大弓製作所 三代目 正清 桑 幡 和 幸 さん(一九五九年生)鹿児島県伝統的工芸品指定  薩摩弓MAP:Hー13 「弓」は、凜とした空気を裂き、的を射る弓道を始め、相撲の弓取り式や神事・お祓いなどにも使われ....

桑幡正清大弓製作所 三代目 正清 桑 幡 和 幸 さん(一九五九年生)鹿児島県伝統的工芸品指定  薩摩弓MAP:Hー13 「弓」は、凜とした空気を裂き、的を射る弓道を始め、相撲の弓取り式や神事・お祓いなどにも使われています。 その弓の張り顔(成)は、京弓と呼ばれる江戸成・尾州成・紀州成・加州成と鹿児島成に大別されます。その特長はいずれも用途に合わせた形と大きさがあり、騎馬用、遠方用、護身用(枕弓)などが作られてきました。 全国でも弓道の盛んな鹿児島。その中でも国分、隼人、加治木地区の高校は強豪として名高く、幾度も全国制覇を遂げています。 武の国薩摩で製作されて300年の歴史を誇る「薩摩弓」の製造元を訪ねました。 霧島市隼人に工房を構える桑幡和幸(三代目正清)さんは、薩摩藩の弓師、東郷家の流れをくむ製法で、県内の豊富な真竹を使用した、強靱且つ繊細な格調高い薩摩弓を作っています。その特長は、耐湿性に優れ、飛距離が長く、強力で実戦向きという剛健さが、昔から多くのファンを虜にしています。 平成4年に鹿児島県伝統的工芸品に指定され、今日では和幸さんの師匠である父(幸男)さんと桑幡元象さんの2軒のみとなりましたが、桑幡正清大弓製作所では、四代目となる息子さんの大和さんが修行中で、その伝統と匠の技は脈々と受け継がれています。 和幸(三代目正清)さんに、構造や製法を伺いました。 薩摩弓の製作工程は、実に200工程以上にも及び、そのひとつひとつに全神経を注ぎ、疎かにはできません。 弓の材料となる真竹は、竹の水分が抜ける時期の10月から12月までに切り出し、四ッ割りして自然乾燥させ、その後、数年間寝かせます。その竹に油抜きを施し、清らかな美しい姿に仕上げるのです。 竹にもそれぞれ個性があり、芽の出る節や、微妙な節の高さや配置を見極め、製作時に微調整する究極の技が求められています。 薩摩弓は6?7枚の芯材を組み合わせ、カンナで仕上げ、外観となる部分には繊細な側木を使用して美観と風格を醸し出します。 この幾重にも組み合わせる技法は、現代の力学や強弱学の頂点に匹敵するとも言われ、曲がる方向に薄い程、折れにくく、薄い芯材の数が増すほど強靱であることを古来から既に伝えられているのです。そのように組み合わされた芯を外竹と内竹で挟み、上下の関板を接着します。硬くて軽い黄櫨の側木や関板は、現在では稀少になった樹齢30年以上の大木を使用します。次に本体を縄で強く巻きつけ、形を整えながら、竹の楔を打ち込んでいきます。こうして成形を終えると、打ち付けた楔をいたわるように外し、そうしてやっと弓の姿が現れます。 弓に弦を張り込むために、上下の関板に切り込みを入れますが、ここは製作者(弓師)の特徴がよく出る所なので、弓の銘を見ずとも、その関板の切り込みの形で製作者が判別できます。また、この微妙な関板の形で弦に与える影響も変わるため、様々な状況を想定した理想の形になっています。 最終的に、薩摩弓の成に仕上げる張り込みを行い、磨き・仕上げを施して完成させます。これらは弓製作の重要な部分で、修行中は幾度も作り直し、習得に20年を要しました。 簡単な説明ですが、一張りの薩摩弓は、約一年をかけ製作されます。注文を受けても一?二年待ちの状態が続きます。大量生産ができたら良いのですが、自然と対話しながら微調整する要素も多く、合理的には参りません。 優美で強靱な薩摩弓のその成は、正清の緻密な魂と現代の薩摩人気質にもうまく融合しているようです。 全日本弓道連盟では、五段以上の昇段試験には竹弓・竹矢を推奨しています。 ただ単に的に当てる技だけではなく、礼儀作法・姿勢・精神の気高さを併せ持ち、万物の持つ強さや弱さを感じとる、柔軟で強い精神的な一面も要求されるようです。 心の豊かさが問われる時代。優しさの中に強さを包み込んだ薩摩弓の成から時代を超越する、匠の魂が伝わってきます。そば きな りとりこもと のりおろそきょうじんつるせき いたは ぜくさび工房を訪ねて…かず ゆきさち おやまと40